耳が詰まった感じについて
耳が何となく詰まっているような感覚はどなたでも経験があるでしょう。例えば、プールやお風呂で耳に水が入った際など、何となくふわふわする感覚を覚えることがあると思います。
医学的に見ると、この感覚は耳閉感と言われるものです。
一時的に耳の内と外で気圧差があることで生じる場合もありますが、中には疾患が原因でなる場合もあります。
違和感が長引いている方は、なるべく早めに当院までご相談ください。
耳が詰まった感じがする時の原因
耳閉感はどなたにでも起こり得るものですが、感じ方には原因による違いや個人差があります。当院の患者様の中でも、耳にずっと水が入っている感覚、何となく塞がっている感覚、ボーっとする感覚など、感じ方はまちまちです。
こうした症状は、内耳、中耳、外耳のどこかで異常が生じている場合が考えられます。
内耳で耳閉感が起きる疾患には、低音障害型感音性難聴やメニエール病があります。このような疾患では低音だけの聞こえが悪くなっているので、難聴になっていても自覚することが難しく、耳が詰まっているように感じる程度のことが多いです。また、ボーというような低音の耳鳴りを伴うことが多いです。最近では、ヘッドホンやイヤホンで過度な音量で音楽を聴き続けることが原因で耳閉感が起きてしまう方が増加しており問題になっています。
中耳では、過度なダイエットなどによって耳管が開いたままになる耳管開放症、風邪などによって耳管が腫れて空気圧を適切に抜けなくなる耳管狭窄症、鼻や耳管の疾患によって滲出液が中耳に溜まる滲出性中耳炎などによって生じることがよくあります。
外耳では、異物や耳垢が耳の中に詰まっていたり、プールやお風呂の際に耳に水が侵入したりするなどの物理的要因だけでなく、外耳炎による外耳道の腫れ、鼓膜に付着した分泌物などによって生じることもあります。
耳が詰まった感じがする時の診察
はじめに問診を行い、いつから耳閉感があるのか、持続的なのか断続的なのか、耳閉感が起こる前後に風邪を引いたか、疲労やストレスが溜まっていないか、悪くなる前に耳を触らなかったかなどを伺います。
中耳や外耳は、内視鏡や顕微鏡で内部を確認し、異常が起こっていないか観察します。
中耳炎の疑いがあれば、鼻の奥なども観察します。中耳や外耳で異常が見つからなければ、内耳の異常が疑われるため、聴力検査を実施します。
耳が詰まった感じがする時の検査
聴力検査で難聴になっているかを確認します。難聴は、中耳や外耳の異常によって内耳まで音が伝達されない伝音難聴、内耳もしくは内耳から脳へ音情報を伝達する神経などの異常による感音難聴、そし伝音難聴と感音難聴が伴に存在する混合性難聴に分けられます。聴力検査によって、どのタイプの難聴かがわかります。
耳管機能に異常があるために耳閉感が起きていることが疑われるときは、鼓膜の動きをチェックするティンパノメトリー検査や耳管の開き具合をチェックする耳管機能検査を行います。
考えられる疾患
外耳に原因がある耳閉感
耳垢栓塞
耳垢栓塞とは、耳垢が詰まって外耳道が塞がってしまった状態です。耳垢で耳栓となってしまうので聞こえが悪くなります。耳垢をご自身で取ろうとすると、耳垢を奥に押し込んでしまったり、外耳道に傷をつけたりして外耳炎が起こるリスクがありますのでお控えください。
また、お風呂の際に外耳道に水が入ることで耳垢が膨らみ外耳道がしっかり塞がってしまうと、急に耳閉感が起こることもあります。
当院では保険診療で耳垢を取ることができます。顕微鏡で観察しながら優しく耳垢を取りますので、痛みを感じる心配もありません。小児やご高齢の方には定期的に耳垢掃除が必要な方もいらっしゃいますので、耳垢が気になるようでしたらご気軽に一度ご相談ください。
外耳炎
外耳道には、真菌や雑菌などの常在菌が存在します。健康状態に問題がなければ、こうした常在菌の数は正常なため感染が起こりませんが、何かしらの原因で数が異常になることで感染が起こり外耳道炎を発症します。外耳道は、鼓膜側の深部にある骨部と浅い部分の軟骨部に大別されます。軟骨部には皮脂腺があるため、雑菌による感染が起こるリスクがあります。また、骨部外耳道では皮下組織がなく薄い皮膚が直に骨壁上にあるので、耳かきでちょっと触っただけでも皮膚が傷つきやすく、そうなると感染のリスクが高まります。
外耳炎が起きると、耳のかゆみ、痛み、耳垂れなどの症状が起こり、耳垂れが外耳道内に溜まったりすると耳閉感を感じるようになります。
外耳炎を起こした耳に対しては、外耳道内にたまった耳垢や耳垂れを清掃除去したのち、細菌感染の疑いがあれば、抗菌剤含有の軟膏を患部に塗ったり抗生剤を内服していただいたりします。痒みの強い場合には、ステロイド含有軟膏を塗ることもあります。真菌感染が起こっている場合は、抗真菌薬を使います。また、重度のかゆみがあれば、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬を使用します。
外耳炎はすぐに完治できないことも往々にしてあるため、専門医の指導の下できちんと通院することが重要です。
耳かきによる外傷が原因となりやすいため、発症を防ぐために耳かきは程々にしましょう。また、固い素材の耳かき棒は使用せず、細い綿棒などを使ってなるべく耳の入り口付近を拭く程度に留めましょう。頻度は最大でも月に2回程度がベストです。
違和感がなかなか消えない場合は、こまめに耳鼻咽喉科を受診して、専門医に耳掃除をしてもらうことをお勧めします。
外耳道異物
人によって違いはありますが、外耳道は成人で全長約2〜3.5cmで、乳幼児ではさらに短くなります。外耳道の一番奥の部分には鼓膜があります。
小さな子どもは様々なものに興味を示すため、小石、ビー玉、玩具の小さな部品などが入ってしまう恐れがあります。成人の外耳道異物では、綿棒先端の綿毛が外れて残ってしまったり、蛾などの昆虫が侵入したりすることが比較的多くみられます。
主な症状には、耳閉感のほか、痛み、出血などがあります。大抵は、顕微鏡で観察しながら異物を取ることができます。
耳に異物が入った場合、無理やり取ろうとするとさらに深いところに押し込んでしまう恐れもありますので、なるべく早めに当院までご相談ください。
中耳に原因がある耳閉感
滲出性中耳炎
滲出性中耳炎は、耳と鼻の間を繋ぐ耳管の通りが悪くなって起きる疾患で、乳幼児によく見られる中耳炎です。小児の場合には、副鼻腔炎や鼻の深部にあるアデノイドの増大などが主な原因ですが、一般的には就学時以降になると徐々に治ることが知られています。成人の場合には、風邪を引いたときに発症することが多いです。
なお、急性中耳炎などとは異なり、激しい痛みを伴うことはありませんが、耳がこもっているや聞こえにくいといった症状がおきます。滲出性中耳炎の中には、長期間放っておくと、鼓膜が凹んで鼓室粘膜とくっついてしまう癒着性中耳炎や凹んだ鼓膜に垢が溜まって耳小骨が溶けていく真珠腫性中耳炎になってしまうことがありますので、定期的に診察を受けることは大切です。
軽症なものは、自然に軽快したり薬物療法で改善しますが、難治例に対しては、鼓膜に小さな孔を開けて内部の滲出液を吸引する鼓膜切開を行います。
こうした治療をしても滲出性中耳炎を頻発する場合は、鼓室の通気性を良くするための鼓膜に換気チューブを取り付けることも検討します。副鼻腔炎やアデノイドの異常などによるタイプでは、原因疾患の治療も並行して実施します。
好酸球性中耳炎
血液中に存在する喘息やアレルギー反応と関係がある白血球の仲間が好酸球です。好酸球中耳炎とは、非常に粘っこいにかわ状の液体が中耳の中に溜まる疾患で、両耳が中耳炎になることが多いです。この液体を顕微鏡で見るとたくさんの好酸球が含まれています。好酸球性中耳炎の患者様の多くは、気管支喘息を併発しています。抗生剤はまったく効き目がなく、治療が非常に難しい病気です。難病指定になっている好酸球性副鼻腔炎を併発していることも多いです。軽症のときは耳閉感程度ですが、ネバネバする固い液体が中耳に溜まってしまうと中等度以上の伝音難聴になっていまいます。喘息発作が起こると症状はひどくなりますが、発作が落ち着くにつれて症状も落ち着いていきます。しかし、悪化して内耳にもダメージが及ぶと感音難聴が起こる恐れがあります。
治療にはステロイド薬の鼓室内注入療法が有効ですが、効果が不十分な場合は、ステロイド薬を内服することも検討します。また、病状に応じて鼓膜を切開して溜まった液体を吸引したり、鼓室の通気性を良くするために鼓膜換気チューブを取り付けたりすることもあります。
現状では、喘息と同様で完治が困難な疾患ですが、病状を悪化させないためには、医師の指導の下で適切な治療を根気強く継続することが大切です。
内耳に原因がある耳閉感
低音障害型感音難聴
低音の耳鳴りに伴い、突如として低音を聞き取りづらくなる難聴になります。自分の声が割れて聞こえる、響くように聞こえる、耳抜きをしても耳閉感が消えないといった症状が起こります。時にめまいを伴うことがあり、20〜40代の女性が発症しやすい傾向にあります。明確な発症原因は不明ですが、内耳のリンパ液が蝸牛部だけに溜まることで発症に繋がるのではと考えられます。
軽症の場合は、ビタミン剤や内耳血流改善剤で回復することもありますが、聴力低下が大きい時はステロイド薬の内服を行います。睡眠不足、ストレス、疲労などがきっかけで発症するともいわれており、疲労を溜め過ぎないこと、程よくリラックスすることなど、日々の生活でもしっかり管理することが重要です。
メニエール病
内耳は、平衡感覚に関係する三半規管と前庭、音を感知する蝸牛で成り立っています。メニエール病は、内耳にある2種類のリンパ液が何らかの原因でバランスが崩れて発症します。メニエール病の特徴的な症状は、耳鳴り、難聴そしてめまいがほぼ同時に起きることです。めまいは回転性のめまいで、ひどい時は嘔気、嘔吐を伴うことも珍しくありません。聴力は、低音域の聴力が低下していることが多く、めまいが良くなると聞こえも良くなる場合が多いですが、めまい発作を繰り返すと、聞こえは十分には回復せず、徐々に難聴が進行していきます。
治療は、対症療法として利尿薬、血流改善薬、抗めまい薬、精神安定剤などの薬物療法を実施します。薬物療法では効果が不十分な場合は、内耳のリンパ液の吸収に関係がある内リンパ嚢を開放したり、前庭の神経を取り除き平衡感覚に関する信号が脳に伝わらないようにしたりする手術を行うこともあります。
耳が詰まった感じがする時の治療
外耳炎では、外耳道内を清掃除去したのち、細菌感染の疑いがあれば、抗菌剤含有の軟膏を患部に塗ったり抗生剤を内服していただいたりします。痒みの強い場合には、ステロイド含有軟膏を塗ることもあります。真菌感染が起こっている場合は、抗真菌薬を使います。また、重度のかゆみがあれば、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬を使用します。
外耳道に異物が侵入した場合は、顕微鏡などで注意深く確認しながら異物を取り除き、洗浄・消毒を実施します。
中耳では、中耳炎が大きな原因となりますが、中耳炎の種類によって治療法は様々です。風邪や副鼻腔炎など鼻の疾患が原因と思われる場合には、鼻の治療も並行して実施します。
内耳では、内リンパ液の状態を整える治療をメインで実施します。めまいなどの症状には対症療法を実施し、高浸透圧利尿剤やビタミン剤なども服用します。また、日々の生活を見直し、疲労やストレスを溜め過ぎないようにすることが大切です。